1 試験の目的 |
元来aFGF(FGF-1)と、KGF(FGF-7)は、とても高価な原料であり、当協会が認定している原料が細胞増殖能力を本当に備えているのか、 また、高価な標準品との比較でもその能力が劣っていないのかどうかを調べると同時に、入手することができた他社のaFGF化粧品原料との比較も行う。 さらに結果から当協会の認定最低基準濃度で細胞増殖効果が認められるかどうかを検証する。 |
2
試験期間 |
2011年3月30日から2011年6月3日
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3
試験方法 |
aFGF 独)理化学研究所、バイオリソースセンター細胞材料開発室(RIKEN Cell Bank)から入手したBALB/3T3 clone A31(マウス胎児の線維芽細胞)を用いて、 設定された測定条件に従って、増殖曲線を作成した。 KGF American Type Culture Collection(ATCC)から入手した4MBr-5(サルの上皮細胞株)を用いて、 設定された測定条件に従って、増殖曲線を作成した。 |
4
測定条件の概要は表1の通り
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測定対象 |
aFGF |
KGF |
測定時の培地 |
0.1%FBS、ゲンタマイシン
10μg/mL、 ヘパリンナトリウム10μg/mLを含むMEM |
5%FBS、ゲンタマイシン10μg/mLを 含むF-12K Nutrient Mixture |
細胞播種密度 |
2x103cells/well、96well plate |
2x103cells/well、96well plate |
培養条件 |
37℃、5%CO2 |
37℃、5%CO2 |
培養日数 |
播種後1日に被験物質または 陽性対照物質を含む上記培地に 交換し、5日間 |
播種後1日に被験物質または 陽性対照物質を含む上記培地に 交換し、5日間 |
細胞数の測定法 |
PicoGreen
® dsDNA Reagent (インビトロジェン社)による DNAの測定 |
PicoGreen
® dsDNA Reagent (インビトロジェン社)による DNAの測定 |
5
被験物質 |
aFGFは表2のとおり、KGFは表3のとおり。 |
被験物質番号 |
1 |
2 |
3 |
本報告書における 被験物質名 |
R&D社aFGF |
日本EGF協会認定aFGF |
C社化粧品原料aFGF |
性状 |
白色の凍結乾燥粉末 |
白色の凍結乾燥粉末 |
透明な液体 |
濃度 |
― |
― |
1ppm(1μg/mL) |
活性規格 |
ED50が0.1〜0.3ng/mL |
2.5×105IU/mg以上 |
ED50が0.2ng/mL以下 |
活性測定に使用した 細胞 |
NR6R-3T3 |
Balb
3T3 |
NIH3T3 |
容量、本数 |
25μg入りバイアル1本 |
2.5mg入りバイアル1本 |
30g入りバイアル1本 |
有効期限 |
-20℃〜-70℃で保存する とき、入手後12ヶ月 |
2011年12月7日 |
2012年1月9日 |
価格 |
\36,000/25μg*1 |
非公開 |
― |
保存方法 |
入手後、使用時まで 冷蔵保存。溶解後は -80℃に設定した 冷凍庫内で保存。 |
入手後、使用時まで 冷蔵保存。溶解後は -80℃に設定した 冷凍庫内で保存。 |
入手後、使用時まで 冷蔵保存。 |
被験物質番号 |
4 |
5 |
本報告書における 被験物質名 |
R&D社KGF |
日本EGF協会認定KGF |
性状 |
白色の凍結乾燥粉末 |
白色の凍結乾燥粉末 |
濃度 |
― |
― |
活性規格 |
ED50が15〜25ng/mL |
2.0×105IU/mg以上 |
活性測定に使用した細胞 |
4MBr-5 |
4MBr-5 |
容量、本数 |
10μg入りバイアル1本 |
5mg入りバイアル1本 |
有効期限 |
-20℃〜-70℃で保存するとき、 入手後12ヶ月 |
2010年9月1日 *1 |
価格 |
¥55,000/10μg *2 |
非公開 |
保存方法 |
入手後、使用時まで冷蔵保存。 溶解後は-80℃に設定した 冷凍庫内で保存。 |
入手後、使用時まで冷蔵保存。 溶解後は-80℃に設定した 冷凍庫内で保存。 |
*
1 原料の表示上は2010年9月1日が有効期限ですが、凍結乾燥粉末を冷蔵保存していれば
有効期限が過ぎても活性があることを証明する為に、あえて有効期限切れの原料を使用しました。 * 2 換算すると1μgあたり5,500円、当協会認定KGF原料1本(5mg)あたりでは27,500,000円になります。 |
6 測定結果
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6-1 R&D社aFGF 試験は2回実施(試験1、試験2)しました。増殖曲線は図1及び2のとおりです。この標準品での試験結果でA31線維芽細胞の 増殖活性が示されたことから、この測定モデルは有効なものであることが示されました。R&D社aFGFは2回の試験のどちらも 16ng/mLあたりで能力のピークを打ち、DNA量がaFGF非添加時の3倍程度になっていることが判ります。 この原料を化粧品に使用するとすれば、細胞増殖能力を示す濃度のレンジが狭いため、高濃度で配合すれば効果が低くなる可能性があり、 また低濃度で配合すれば、経時的に失活した場合に効果が無くなるというリスクを伴うことが考えられます。 |
6-2日本EGF協会認定aFGF |
試験は2回実施(試験1、試験2)しました。結果は図3及び4のとおりです。 日本EGF協会認定aFGF は1000ng/mL付近までの第一の活性と、1000ng/mL以上16000ng/mL付近までの 第二の活性の2つの活性が重なって存在するような挙動を示しました。 この結果から、日本EGF協会認定aFGFは10ng/mL〜20μg/mLないしはそれ以上の幅広いレンジで線維芽細胞の 増殖効果を発揮することが判明しました。細胞増殖能力は試験1では10,000ng/mL超付近でピークを打ち、 DNA量が非添加時の4〜5倍程度になっていることが判ります。また試験2ではピークが存在せず、 最高でDNA量が非添加時の8〜9倍になっています。R&D社のaFGFと比較すると、 超低濃度領域(10ng/mL付近)ではR&D社のaFGFの細胞増殖能力が勝っているものの、その辺りで能力のピークを打ち、 日本EGF協会認定aFGF はそれより高濃度になればなるほど細胞増殖能力が増していくことがわかります。 この試験では線維芽細胞を5日間aFGFにさらしている状態での結果ですので、1日に1回ないしは2回程度皮膚に塗布する といった用法であれば、条件によっても差が出ますが、おおよそ実験での100倍程度の濃度で同じ効果が 得られるのではないかと考えられます。 つまり、1μg/mL〜2mg/mLの範囲であれば、濃度に応じて細胞増殖能力が高くなると推測されます。 日本EGF協会のaFGFの認定濃度はこの被験原料で1.6μg/mL以上となっており、 当協会の認定最低基準濃度で細胞増殖効果が充分認められると考えられます。 |
6-3 C社化粧品原料aFGF |
C社化粧品原料aFGFは、ブチレングリコールを添加剤として含むaFGF 1μg/mL溶液であるため、aFGFの最高濃度をその1/10の100ng/mLとしました。 試験は2回実施(試験1、試験2)しました。結果は図5及び6のとおりです。試験1及び試験2ともに増殖促進活性は認められず、 むしろ高濃度では濃度依存的なDNA量の減少、すなわち増殖の抑制が認められました。 この原料の規格はED50が0.2ng/mL以下となっており、R&D社aFGFとほぼ同じでしたが、実際は効果が無いという残念な結果になりました。 理由としてはaFGF自体が最初から入っていなかったということや、aFGFがすでに失活していたということなどが考えられます。 さらに逆に増殖の抑制が認められたということは、液体原料に含まれているそのほかの成分(ブチレングリコールなど)の影響が考えられます。 この原料をどれほど高濃度に配合しても、まったく効果が無いということになります。 |
6-4 R&D社KGF |
試験は2回実施(試験1、試験2)しました。結果を図7及び8のとおりです。 試験1及び試験2ともに、4000ng/mLまで濃度依存的にDNA濃度の増加が認められました。 この標準品での試験結果で4MBr-5上皮細胞の増殖活性が示されたことから、この測定モデルは有効なものであることが示されました。 R&D社KGFは2回の試験のどちらも10,000ng/mL弱あたりで能力のピークを打ち、DNA量が非添加時の3.5〜4.5倍程度になっていることが判ります。 細胞増殖能力を示す濃度のレンジがそれなりに広く、10ng/mL〜10μg/mLで濃度依存的に細胞増殖能力がアップするようです。 ただし、10μgが55,000円ですので、コスト面で化粧品に利用できそうにありません。 |
図8.4MBr-5に対するR&D社KGFによる増殖曲線(試験2)
縦軸は細胞数の指標であるDNA量、横軸はKGF濃度の対数を示す。
6-5 日本EGF協会認定KGF |
試験は2回実施(試験1、試験2)しました。結果は図9及び10のとおりです。 試験1及び試験2ともに125あるいは250ng/mLまで、概ね濃度依存的に細胞増殖能力は増加し、 ピークではDNA量が非添加時の4倍程度になっていることが判ります。 ピークは125〜250ng/mLあたりでむかえるものの、それ以上の高濃度領域でもそれなりにDNA量の増加が見られ、 細胞増殖能力を示す濃度のレンジは、低濃度(0.1ng/mL)から高濃度(10μg/mL)までと広いようです。 R&D社のKGFと比較すると、低濃度から活性が認められ、活性ピークの濃度が低く、 ピーク時の細胞増殖能力はほぼ同じであるということがわかります。 この試験では4MBr-5上皮細胞を5日間KGFにさらしている状態での結果ですので、 1日に1回ないしは2回程度皮膚に塗布するといった用法であれば、条件によっても差が出ますが、 おおよそ実験での100倍程度の濃度で同じ効果が得られるのではないかと考えられます。 つまり、10ng/mL〜25μg/mLの範囲であれば、濃度に応じて細胞増殖能力が高くなるなり、 1mg/mLまで効果が認められると推察されます。 日本EGF協会のKGFの認定濃度はこの被験原料で0.2μg/mL以上となっており、 当協会の認定最低基準濃度で充分細胞増殖効果が認められると考えられます。 |