FGFとは
線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor)は線維芽細胞を
はじめとするさまざまな細胞に対して増殖活性や分化誘導など
多彩な作用を示す多機能性細胞間シグナル因子である。
現在までに構造上の類似性からヒトにおいて23種類からなる
ファミリーを 形成している。特にFGF-1(aFGF)やFGF-2(bFGF)は
中胚葉構造に 対して強力な細胞分裂促進効果を与えることが
知られている。
2006年10月現在日本国内ではFGFファミリーのなかでも
bFGF(FGF-2)のみ医薬品として登録があり、化粧品原料には
使用できない。
またaFGF(FGF-1)はE.Coli(非病原性大腸桿菌)由来の遺伝子
組み換えによるもののみINCI登録があり、表示名称は
ヒトオリゴペプチド-13となっている。

FGFに関する特許
1997年アメリカのブラウン博士は、「皮膚老化を抑制する方法」という特許を取得、その中でFGFが真皮に効果を与え、皮膚の
老化を逆行させる結果となるかどうかを判定する実験をおこなった。外傷を受けていない皮膚に対してEGF及びFGFがもたらす
量的効果と質的効果を判定するために、12名の被験者が調査に参加した。各被験者に対し、4種類の異なるクリームを使用して
局所的な治療を行った。 試験部位は、左右の各前腕の肘前皺より2センチ末端側の部分、及び左右の各前腕の肘前皺より
2センチ 中央寄りの部分の4箇所に分けられた。各試験部位は被験者ごとに局所的に無作為抽出され、以下の組み合わせの
クリームが使用された。
  クリーム1 担体のみ
クリーム3 担体内に0.1μg/mlのFGF
クリーム2 担体内に0.1μg/mlのEGF
クリーム4 担体内に0.1μg/mlのEGFと0.1μg/mlのFGF
どちらの成長因子も、0.1μg/mlの濃度に処方された。各クリームは、それぞれの試験部位に対して1日2回、60日間塗布された。
60日の期間が 終了後、各試験部位から2ミリ分のパンチ生検標本を採取し、真皮を分析し、ヒドロキシプロリン量を測定した。
対照を基準値1(1.0)とし、 他のすべての測定値をその対照に対する割合で表した場合に、各被験者から採取した全4種類の標本に
対してヒドロキシプロリン量を 計測した結果が以下の表である。
60日間連続塗布後の真皮のヒドロキシプロリン量 (対照に対する割合) (in vivo)
ヒドロキシプロリン分析により、EGFのみの場合は真皮に対して統計的な効果を与えていないようだが、FGFのみの場合は
ヒドロキシプロリン量が45%増加し、EGFとFGFを組み合わせた場合は(EGFのみの場合に明らかな影響が見られないにも
かかわらず) FGFだけの場合を上回る付加的な効果をもたらす(80%増加)ことが、このデータによって示された。
ヒドロキシプロリンとは
コラーゲン合成に必要な、非常に重要なアミノ酸で、コラーゲン中のアミノ酸全体の10%を占めています。組織中のコラーゲン量を
調べる際のコラーゲンタンパクの目印として利用されており、真皮中のヒドロキシプロリンが少量増えるということは、 線維芽細胞
自体はそれ以上に増えているということになります。

FGFのレセプターシステム
FGFが効果を発揮するためにはFGFに結合するチロシンキナーゼ型レセプター(受容体)がなければならない。
FGF-1のレセプターは 主に上皮系細胞に見られ、FGF-2のレセプターは主に線維芽細胞などの間葉系細胞にみられる。
ブラウン博士の実験で使用された FGFはFGF-2(bFGF)であったが、外傷を受けていない皮膚に対しての効果は
FGF-1(aFGF)の ほうが高いと考えられる。


FGF-1の価格
E.Coli(非病原性大腸桿菌)由来の遺伝子組み換えによるFGF-1の実験用試薬の公表価格は5μg79,000円となってる。

計算上1μg当たり15,800円、1mg当たり15,800,000円となるが、化粧品原料としての公表価格は不明。


FGFの国内での美容分野での使用例
FGFが線維芽細胞を増殖させることから、おもにニキビ痕治療に使用されている。
ただし、FGF-2は受容体が線維芽細胞に存在することから、CO2レーザーなどで
角質層を破壊する必要がある。
しかし FGF-1ならば、ただ塗るだけで薬理作用が期待できるとされる。
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